被災者支援 ここに注意(日経)の写し [東日本大震災]
2011年3月22日付夕刊の特集記事です。
東日本大震災は発生から10日余り。被害の甚大さや、被災者の困難な生活ぶりが伝わるにつれ、離れた土地にいて、「支援の手をさしのべたい」と願う人は多いだろう。しかし、支援する側の思いが、被災者の願いとすれ違うこともある。救援物資を送ったり、ボランティア活動で現地へ入る際の注意点をまとめた。
個人の救援物資、受け付けの余裕なく
「個人からの救援物資はお断りさせていただいています。ご協力いただける方は寄付金などでお願いします」。今回の大震災で被害の大きかった宮城、岩手、福島の各県はホームページでそろってこんな文章を掲載している。
大口物資を送る企業・団体と異なり、個人は衣服や食料品、毛布などが少量ずつ混在するケースがほとんどだ。「善意は大変ありがたいが、仕分けしている余裕がない」(宮城県社会福祉課の担当者)
岩手県でも、県庁などに救援物資を直接持ってくる人もいるが「丁重にお断りさせていただいている状態。もう少し落ち着けば個人の救援物資も受け付けられるかもしれない」(保健福祉部地域福祉課)という。
阪神大震災では古着が大量に余るなど、ニーズと食い違うケースも少なくなかった。兵庫県災害対策支援本部の小山達也防災事業係長は「保存期間を過ぎた食料品がないかなど、衛生面や安全性を確かめるのに時間がかかる問題もある」と指摘。ガソリン不足で輸送面の不安もある。
ただ、被災地の災害対策本部と物資の品目などを調整したうえで、個人の救援物資を受け付けている自治体もある。
兵庫県は被災地の災害対策本部などと連絡を取り、混乱を避けるため「防寒着」に絞って個人からの寄付を募集。県がボランティアを募って仕分けをしたうえで被災地に届ける予定だ。
ただ、こうした自治体も、受け付けは地元住民が対象。大分県は、「県外からも多数の問い合わせがあるが、県内からの提供分で精いっぱい」という。
募集する物資や提供する際の注意点は自治体のホームページに掲載されているケースがある。問い合わせ窓口もある。居住地の自治体が募集しているかどうか、受け付けているものは何か、事前に確認が必要だ。
個人の物資を受け付けている民間団体も。東京ボランティア・市民活動センターのホームページには、物資を受け付けている団体の情報も掲載されている。
ボランティア、食事・寝床は自己責任
被災地の自治体は大震災発生後、ボランティアの仕事内容や派遣者数を調整する「災害ボランティアセンター」を立ち上げたが、ほとんどは現在、県外からのボランティアを受け付けていない。
現在は、現地に入るルートが限られており、志願者が殺到すると支援物資の輸送に支障が出てしまう。「今はプロの手が必要とされている時期。思いだけでは迷惑にもなる」とシャンティ国際ボランティア会(SVA)の鎌倉幸子広報課長は話す。
災害ボランティアセンターや社会福祉協議会はホームページに募集情報等を掲載しているので、事前にニーズを確認しておこう。
福岡県NPO・ボランティアセンターは、は、派遣が可能になるまでの間に「できる活動内容」を各団体や個人に登録してもらい、被災地の情報を提供する仕組みを整えた。
被災地以外でも、救援物資の仕分けや、移住してきた被災者向けの活動など、ボランティアは可能。さらに、時期がたてば、現地の避難所の運営などで人手が必要になる。その際の注意点は何か。
東京ボランティア・市民活動センターの竹内則夫副所長は「ボランティアは原則自己調達」と強調する。現地入りするルートや交通手段は自力で見つけ、装備、食事なども自分で確保しよう。「避難所で『分けてくれ』というのは通用しない」と竹内さん。
寝る場所も同様だ。多くの避難所は満杯の状態。寝袋を持参すると便利だろう。
安全確保もボランティア自身の仕事だ。
今回の地震では津波被害が甚大だった。SVAは被災地にメンバーを派遣しているが、倒壊した建物と比較的被害が少なかった建物が混在する地震と違い、津波で多くの家屋が倒壊したり、流されたりしている状態だ。道がふさがっているところも多く、余震などの際の避難ルートは頭に入れて行動する必要がある。
SVAは2004年のインド洋大津波の被災地にもメンバーを派遣。その際の教訓として、鎌倉さんは「土地勘があり、人のネットワークもあるので移動するときは地元の人と動くと効果的な支援ができる」と話す。
実際にボランティアを受け入れられる段階になれば、様々なニーズが発生する。自分の得意分野と求められる仕事が異なることもあるだろう。「得意分野に固執するのではなく、与えられた仕事をする柔軟さが必要」と竹内さんは話す。被災者のニーズがすべて同じとは限らない。相手の立場に立って行動する、ボランティアの基本精神が求められている。
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